「乳酸」についてどのようなイメージを持っていますか?
「乳酸が溜ると疲れが出る、乳酸を除去することで疲労回復を図る、乳酸が溜って筋肉が動かない、乳酸が溜って筋肉痛がひどい」など「乳酸=疲労物質」的なイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
今回の記事では「乳酸」について簡単に解説したいと思います。
乳酸は疲労物質ではない
「乳酸=疲労物質」という考え方は一昔前まではそれがあたりまえでした。それは筋活動により乳酸が発生し、そのタイミングで筋活動の継続が難しくなってくることから研究結果として乳酸が原因で筋疲労が起こっていると考えられたからです。
そういうこともあり、未だに乳酸=疲労物質という考え方は根強く残っています。
実際わたしも最近まではそう信じていました。実は私は体育学部に通っていたもんですから(もう20年以上前になりますが。。)その当時に教えられた「筋活動をすると乳酸が生成され、その乳酸には筋収縮を阻害する働きがあるから筋活動を持続することができなくなる」という風なことを完全に信じていましたので最近まで筋トレで反復運動ができなくなってくると「乳酸が溜ってきたー」なんて喜んで叫んでましたね。
しかし、乳酸が筋疲労を引き起こす原因物質でないことが最近の研究でわかってきました。
簡単な話
- 筋活動をおこなうことで乳酸が生成される
- 筋活動を続けるとさらに乳酸が生成されて溜まってくる
- 筋活動により筋肉が疲労する
以上の相関関係から「乳酸=疲労物質」という考えに至っただけで実のところそこに因果関係はなかったということです。
また、乳酸は比較的早く体内から無くなるので乳酸が溜った状態が続くことは無く、乳酸が溜っているから疲労しているとか筋肉痛になっているなどということは起こるはずがないのです。
乳酸のはたらき
一昔前まで疲労物質とされてきた乳酸ですが、じつは良いはたらきをいろいろとしてくれる物質ということがわかってきました。どんなはたらきがあるか少し紹介します。
疲労をおさえる
疲労物質どころか疲労をおさえる働きがあることが最近研究でわかってきました。
解明されてきている筋疲労の原因のひとつに「カリウムイオン」の影響があります。
激しい筋活動をおこなうとカリウムイオンが細胞外へ流出してしまい、この流出したカリウムイオンが筋収縮を阻害して筋活動が持続できなくなります。
乳酸はこのカリウムイオンの悪影響を緩和して筋活動を持続できるようにするはたらきがあります。
あらたなエネルギー源に再合成
筋肉が活動するためには「ATP」という物質が非常に大切で、ATPを分解するときに発生するエネルギーで筋肉は動いています。
このATPはグルコース(ブドウ糖)を分解して生成されますが(他の生成過程もあるが)、ブドウ糖を分解したときに生成される副産物が乳酸になります。
乳酸は肝臓に運ばれて再度合成されてグルコースになり筋活動のエネルギー源となります。
心筋や遅筋繊維のエネルギーとなる
筋肉は大きく「速筋繊維(瞬発的な強い力を発揮)」と「遅筋繊維(持久的な力を発揮)」に分かれます。
乳酸は速筋繊維が収縮する過程で生成されますが、その後遅筋繊維に運ばれてエネルギー源として使用されます。
また、心臓を動かす筋肉である心筋にも運ばれてここでもエネルギー源として使用されます。
乳酸は疲労原因というネガティブな性質を持つ物質ではなく、疲労の抑制や身体活動のエネルギー源となる私たちの身体にとって非常に大切な物質となります。
筋トレをおこなううえでも乳酸は非常に良いはたらきをしてくれていたんですね。まさにベストパートナー。乳酸に感謝しながら筋トレを楽しみましょう。