他の人と比べて、自分はダメだなって落ち込んじゃう…
そんな風に感じて、心が苦しくなることはありませんか？
もしかしたら、それは「自己受容」が少し足りていないサインかもしれません。
この記事では、近年注目されているアドラー心理学の考え方をもとに、「自己受容」について分かりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、
- アドラー心理学における「自己受容」がどんなものか分かる
- 自己肯定感との違いが理解できる
- ありのままの自分を受け入れるための具体的なヒントが得られる
ようになります。少し肩の力を抜いて、一緒に見ていきましょう！
アドラー心理学が教える「自己受容」ってなんだろう？
アドラー心理学では、「自己受容」を 「ありのままの自分を受け入れること」 と捉えます。
よく「自己肯定感」と混同されがちですが、少しニュアンスが異なります。
- 自己肯定感: 「自分はできる！価値がある！」と、本当はダメだと感じている部分もポジティブに肯定する感覚。
- 自己受容: 「できない自分」「ダメな自分」も、まずはそのまま認めること。「今はこれが自分なんだ」と受け入れる感覚。
たとえるなら、自己肯定感が100点満点の自分を目指すイメージだとすれば、自己受容は「今は60点かもしれないけど、それが今の自分なんだ」と、点数に関わらず自分自身をOKだと認める感覚に近いでしょう。
アドラー心理学では、この「自己受容」が、他者を信頼する「他者信頼」、そして他者に貢献する「他者貢献」へと繋がる、幸せになるための大切な第一歩だと考えられています。
まず自分を受け入れられないと、他者を心から信頼したり、貢献したりするのは難しい、というわけですね。
なぜ自分を受け入れられないの？アドラー心理学の「目的論」で考えてみよう
私たちは、なぜ自分のことをなかなか受け入れられないのでしょうか？
アドラー心理学では、人の行動や感情を「原因」でなく「目的」で考えます。
「〇〇という過去があったから、今はこうなのだ」と考えるのが 原因論。
それに対して、「〇〇という目的を達成するために、このような感情や行動を選んでいる」と考えるのが 目的論 です。
この「目的論」の視点から、「自己受容できない」状態を捉え直してみましょう。
もしかしたら、私たちは無意識のうちに「自己受容しない」という状態を選ぶことで、何か別の 『目的』 を達成しようとしているのかもしれません。
「どうせ自分なんて…」と思ってしまう、その目的は？（劣等コンプレックスの目的）
アドラー心理学では、劣等感そのものは悪いものではなく、成長へのバネになると考えます。
問題は、劣等感を言い訳にして「自分にはできない」「挑戦する価値がない」と思い込み、行動しない状態（劣等コンプレックス）です。
では、なぜ人は劣等コンプレックスの状態に留まることを選ぶのでしょうか？
そこには、
- 挑戦して失敗するリスクを避けたい
- 『やればできるかもしれない』という可能性の中に留まっていたい
- 『自分は劣っているのだから仕方ない』と考えることで、努力する課題から逃れたい
といった 『目的』 が隠れている可能性があります。
つまり、「ありのままの自分（例えば、努力が必要な自分や、失敗する可能性のある自分）」を受け入れる代わりに、「劣っている自分」というレッテルを貼ることで、現状維持や課題回避という目的 を達成しようとしているのかもしれません。
「完璧じゃなきゃダメだ」と考えてしまう、その目的は？（完璧主義の目的）
「常に100点でないと意味がない」「失敗は絶対に許されない」という完璧主義。
この考え方の裏には、どんな目的があるのでしょうか？
考えられるのは、
- 失敗して傷つくことから自分を守りたい
- 『できない自分』『不完全な自分』という現実と向き合うことから逃げたい
- 常に他者より優位に立つことで、自分の価値を証明し続けたい（そうしないと不安だから）
といった 『目的』 です。
「完璧」という、ある意味で達成が非常に困難な（あるいは不可能な）理想を掲げることで、「ありのままの不完全な自分」を受け入れるという、より本質的な課題から目をそらす、という 目的 を無意識に選んでいるのかもしれません。
「人からどう見られるか」ばかり気にしてしまう、その目的は？（他者の評価を優先する目的）
他人の目や評価を過剰に気にしてしまうのはなぜでしょう？
アドラー心理学でいう「課題の分離」ができていない状態ですが、ここにも特定の目的が隠れていると考えられます。
例えば、
- 他者に嫌われずに、良い関係を維持したい（そのために自分を抑える）
- 他者の期待に応えることにエネルギーを注ぐことで、自分が本当に向き合うべき人生の課題（自己決定など）から目を逸らしたい
- 他者からの承認や称賛を得ることでしか、自分の価値を感じられないと思い込んでいる
といった 『目的』 です。
「他者の評価に左右されない、ありのままの自分」を受け入れる勇気を持てず、他者の評価というコントロールできないものに自分の価値を委ねることで、対人関係の摩擦を避けたり、一時的な承認を得たりする目的 を達成しようとしているのかもしれません。
このように目的論で捉えると、「自己受容できない」のは、単に過去の原因や性格のせいではなく、今の自分が（多くは無意識的に）『自己受容しない』という選択をすることで、何らかの目的を果たそうとしている という側面が見えてきます。
大切なのは、この視点に立つことで、「原因があるから仕方ない」と諦めるのではなく、「目的があるから、その目的を変えれば、選択も変えられる」という希望が見えてくることです。
自分が何を守ろうとして、何から逃げようとして「自己受容しない」ことを選んでいるのか？
そこに気づくことが、変化への第一歩となるでしょう。
ありのままの自分を受け入れる！自己受容を高めるヒント
「じゃあ、どうすれば自己受容できるようになるの？」と思いますよね。
大丈夫、少しずつ意識を変えていくことで、自己受容を高めることは可能です。
アドラー心理学の「勇気づけ」の考え方も参考に、具体的な方法をいくつかご紹介します。
「できない自分」をまず認める練習
「これができないのはダメだ」と否定する代わりに、「今はこれができないんだな」「苦手なんだな」と、事実として受け止めてみましょう。
たとえば、仕事でミスをしてしまった時「なんでこんなミスを…」と自分を責めるだけでなく、「今回はこういうミスをした。次はどうすれば防げるかな？」と、事実と対策に目を向ける練習です。
「60点の自分でもOK！」と許可を出してみませんか。
小さな「貢献感」を見つける
アドラー心理学では「貢献感」が幸福に繋がると考えます。
大きなことでなくて構いません。
- 家族に挨拶をした
- 落ちているゴミを拾った
- 誰かに笑顔で接した
そんな日常のささいなことでも、「自分は誰かの役に立っている」「ここにいていいんだ」という感覚（貢献感）が、自己受容を後押ししてくれるでしょう。
「課題の分離」を意識する
これはアドラー心理学の重要な考え方の一つです。
「自分の課題」と「他者の課題」を分けて考えることを指します。
たとえば、あなたが誰かに親切にしたのに、相手が不機嫌そうだったとします。
それは「あなたの課題」ではなく、「相手の課題（相手がどう感じるか、どう反応するか）」かもしれません。
他人の評価や反応に一喜一憂せず、「自分にできることはやった」と割り切ることも大切です。
自分の「良いところ」に意識的に『注目』する
自己受容のためには、「できない自分」や「欠点」を受け入れることが大切ですが、それと同時に、自分の「良いところ」や「できていること」に意識的に『注目』することも、とても重要です。
まず前提として、自分自身をありのまま、全体として「見る」ことから始めましょう。
私たちには、得意なことも苦手なことも、好きな部分も嫌いな部分も、様々な側面があります。
それが人間であり、自然な姿です。
「ああ、自分にはこういうポジティブな面も、ネガティブな面もあるんだな」と、まずは評価をせずに全体を俯瞰的に認識することが、自己受容の土台となります。
ただ、多くの場合、私たちは無意識のうちに自分の「欠点」や「できていないこと」にばかり『注目』してしまいがちです。
「今日もあれができなかった」「また失敗しちゃった」「あの人に比べて自分は…」というように、ネガティブな側面にスポットライトを当ててしまう癖がついているかもしれません。
だからこそ、練習として、意識的に自分の「良いところ」や「強み」、「すでに持っているもの」に『注目』することが大切になってくるのです。
- 今日、ほんの少しでも「できた！」と思えたことは何でしょうか？
- 自分のどんな性質や行動が「自分らしいな」と感じますか？
- これまでの経験で、自分のどんな力が役立ちましたか？
- 人から「ありがとう」と言われたり、褒められたりしたことはありませんか？
このように、自分の中に確かにあるポジティブな要素やリソースに、意識的に焦点を当ててみましょう。
自己受容を実践するときの注意点
自己受容は、一朝一夕にできるものではありません。
- 焦らないこと: 昨日より少しでも自分を受け入れられたら、それで十分です。ゆっくり、自分のペースで進めましょう。
- 完璧を目指さないこと: 自己受容に「完璧」はありません。「できない自分もOK」と受け入れるのが自己受容なのですから。
まとめ：自己受容は、もっと楽に生きるための第一歩
アドラー心理学における「自己受容」は、ありのままの自分、たとえそれが不完全であっても、まずは「それでいいんだよ」と受け入れることから始まります。
自己受容ができるようになると、過剰に自分を責めたり、他人と比較して落ち込んだりすることが減り、心が軽くなっていくはずです。
そして、他者を信頼し、社会に貢献していくという、より豊かな人生へと繋がっていきます。
今日から少しずつ、「ありのままの自分」を受け入れる練習を始めてみませんか？
きっと、あなたの心がより穏やかで、温かいものになっていくはずです。