2019年に行われた調査結果では職場でハラスメントを受けたことがあると答えた人の割合が全体の40%でした。
2022年4月からはパワーハラスメントの対策が事業主に対して義務化されています。
ハラスメント被害者にも加害者にもならないようハラスメントに対する知識を身につけていることが重要なスキルとなってきます。
今回の記事ではハラスメントの基礎知識について解説をします。
職場におけるハラスメントとは
ハラスメントとは
- 他人への言動が、本人の意図とは関係なく相手に不快感や不利益を与えたり、尊厳を傷つけたりすること
職場のハラスメントは、いつも勤務している場所に限らず、取引先や出張先、移動先の車中など業務をおこなっている全ての場所、あるいは業務終了後の場面においても発生します。
また、社内の人間関係にとどまらず取引先の人との間や就活生との間でも発生します。
ハラスメントを防止するには、業務上で関わりのあるすべての人に対しての配慮が必要となります。
ハラスメントの種類
ハラスメントは様々な種類がありますが、職場で特に起こりやすいハラスメントとして以下の3つがあります。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- マタニティーハラスメント(マタハラ)
パワーハラスメント
パワハラとは
- 職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為
パワハラの行為は以下の6つに分類されます。
- 身体的攻撃
- 精神的攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
ミスをした部下を叱責するときに、頭を小突いたり、ゴミ箱を蹴飛ばしたりする。
職場のみんなに聞こえるような大声で毎日のように叱責する。
職場全体でおこなわれるイベントに誘わなかったりする。
このような行為はパワハラにあたります。
詳しくは『パワハラを受けているかも?|パワハラの定義と6つの形態』の記事で解説しています。
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セクシャルハラスメント
セクハラとは性的な嫌がらせのことを意味し、職場におけるセクハラは次のように定義されています。
- 「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること
セクハラは言動をおこなった側の意図にかかわらず、受けた側がどのように受け取ったかが重要になります。
性的なからかいや性的な関係の強要、食事などへの執拗な誘い、性的なプライベートを聞いたり、性的なうわさを流したり、不必要な身体への接触などフランクな気持ちでおこなった言動でも相手が不快な気持ちを抱いていればセクハラだと判断できます。
職場のセクハラには「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」があります。
対価型セクハラ
本人の意に反するような性的な言動に対する反応によって不利益を受けるものをいいます。
例えば、
- 性的な関係を求められて、それを断ったために部署を変えられる
- 胸や腰を触られたことに抵抗をしたためプロジェクトから外される
環境型セクハラ
本人の意に反する性的な言動によって、労働環境が不快なものになり、業務を行う上で支障を生じるものをいいます。
例えば、
- 事務所内に露出度の高いカレンダーを貼ることで不快に感じた労働者の業務への意欲が低下する
- すれ違いざまにお尻や胸を触られることで苦痛を感じる
セクハラについては『セクハラの知識を学ぶ|セクハラとは、セクハラの実態など』の記事で詳しく解説しています。
職場のセクシュアルハラスメントが注目されるようになって久しい。 2020年6月に改正労働施策総合推進法が施行されて、男女雇用機会均等法のセクシュアルハラスメント防止対策が強化された。 セクハラがどういった行為のことを指すのか、必[…]
マタニティーハラスメント
マタハラとは
- 妊娠や出産などを理由に精神的・身体的な嫌がらせをおこなったり、退職を勧めたり、解雇など不当な扱いをする行為
マタハラは、妊娠している本人の心身に影響を及ぼし流産や早産につながる可能性があり、命の問題につながる深刻な問題であると捉える必要があります。
マタハラには「制度等の利用への嫌がらせ」と「状態への嫌がらせ」の2つのタイプがあります。
制度等の利用への嫌がらせ
妊娠や出産、育児等に関する制度利用に対して嫌がらせをうけること
例えば、
- 育休を申請したら「今後の昇進の期待はなくなるよ」と言われた
- 産休を相談したら「いったん仕事をやめて育児に専念したら?」と言われた
状態への嫌がらせ
妊娠や出産したことなどに関する言動で就業環境が悪くなること
例えば、
- 妊娠を報告したら「今の忙しい時期になんで妊娠したのか」と繰り返し言われた
- 妊娠中のため力仕事を別の人にお願いするたび、大きなため息をつかれてあからさまに嫌な態度をとられた
ハラスメントの被害にあったら
職場でハラスメント被害にあった場合は、自分の身を守るために以下の行動を起こしましょう。
- 意思を表示する
- 相談する
- 記録を残す
意思を表示する
相手に対して嫌だという意思を表示しましょう。
直接相手に意思表示することが難しい場合は、信頼できる人に嫌だと思っていることを伝えます。
相談する
- 家族や友人、同僚などに相談する
- 会社の相談窓口に相談する
- 公共の相談窓口に相談する。
家族や友人に相談することで直接的な解決に向かわないかもしれませんが、人に話すことで少し悩みが軽くなります。
信頼できる同僚や上司に相談することで、直接的な解決に向けたきっかけになります。
相談できる同僚や上司がいない場合は、会社の相談窓口に相談することで、直接的な解決に向かうきっかけになります。
会社に窓口がない、会社が解決に向けて動いてくれないといった場合は、公共の窓口に相談しましょう。
もちろんはじめから公共の窓口への相談でもかまいません。
公共窓口
記録を残す
携帯やボイスレコーダーで音声の記録を残したり、ハラスメントを受けたことを日記として残しておきます。
ハラスメントをおこなった本人は、ハラスメントをしたつもりがないことが多いこと、ハラスメント行為の事実を認めないケースが多いことがあります。
ハラスメントを受けた証明をするためにも客観的な記録を残すことが必要になります。
ハラスメントによる影響
ハラスメントは被害者はもちろんのこと、加害者やハラスメントが発生した企業にも悪影響を及ぼします。
労働者に与える影響
- 被害者になった場合は、心身の健康が害される
- 労働の意欲が低下する
- 仕事ができなくなり経済的な問題が起こる
加害者に与える影響
- 社会的信頼を失う
- 降格や異動、解雇処分となる場合がある
- 損害賠償責任を負う
企業に与える影響
- 企業の信頼が失われる
- 労働者の意欲が低下する
- 優秀な人材の流出につながる
- 刑事/民事の法的責任を追及される