テレビなどで野球のピッチャーが投球後に肩を冷やしている姿を見たことがあると思います。商売道具でもある大切な肩が故障しないように試合で肩を酷使した後にアイシングでケアしているんですね。
それこそケガをした場合、例えば足首を捻った時などはすぐに捻った部位を安静に保ち氷などで冷やしますその際、患部をテーピングなどで圧迫し心臓よりも高い位置にあげることでケガの程度を軽くすることができます。これはいわゆる「RICE処置」という応急処置法で「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の頭文字をとったものです。
しかし、逆にケガの治療で患部を温めることもあります。患部をゆっくりとあたためて軽くマッサージしたりなどして血行をよくして回復を促進させます。
一般的に急性のときは冷やして、慢性的な場合は温めることが多いです。
では、筋トレをおこなった後はどうでしょうか?
ケガをしては元も子もないのでアイシングでケアした方がいいのか? フィットネスの施設でジャグジーがあるところもあるので温めたほうがいいのでしょうか?
この記事ではこの疑問に対してのひとつの答えを解説したいと思います。

筋トレ後の習慣的なアイシングは筋肥大を阻害する可能性がある
筋トレ後にアイシングを習慣的におこなう行為は筋肥大を阻害する可能性があります。
下記は筋トレ後に習慣的にアイシングをおこなった場合の影響について研究した論文の一文です。
運動後の活動筋冷却が,筋力トレーニングに伴う筋肥大および動脈血管径の増大を抑制し,最大筋力の増加および筋持久力の向上を減弱させる可能性を示した。
出典元:習慣的な運動後アイシングがトレーニングに伴う筋の適応過程に及ぼす影響 山根 基
この研究ではリストカールによる筋トレを14名がおこない7名はトレーニング後にアイシングをして残りの7名はアイシングをしない方法で筋肥大の差を比較しています。その結果、アイシングをおこなった7名はアイシングをおこなわなかった7名に比べて筋肥大の量が小さかったことが確認されています。
細かいメカニズムについてはさらなる研究の必要があるとされていますが、簡単に要約すると筋肉は筋トレにより傷ついた筋繊維が炎症を起こしその炎症を治す過程でより強く大きくなろうとする超回復により成長していきますが、この筋繊維の炎症をアイシングで抑制することにより超回復の過程も抑制されて成長が少なくなるということです。
またこの論文では急性傷害の応急処置としてのアイシングの意義については明確であるとも論されており、アイシングを応急処置に用いることは有効であると確認しています。しかし、本来の目的から外れて傷害の無い部位を運動後に冷やして傷害を防止する試みや主観的な爽快感を求めるために冷やす行為などに対してトレーニング効果が抑制される可能性があるとしています。
私見ですが、冒頭に書いた野球のピッチャーの場合は試合において全力で投球をおこない急性の炎症を起こしている可能性があるためアイシングによりケアする必要性があると思います。しかし、通常私たちがおこなっている筋トレはケガをしないよう安全に注意した中で最大のパフォーマンスを得られるように行っているはずですのでアイシングする必要はないと考えていいと思います。
しかし、明らかにオーバートレーニングをしてしまったときや、トレーニングにより痛みや違和感を感じるときなどはその部位に対して迷わずアイシングをおこなうべきだと思います。

筋トレ後に温めると筋肥大に効果あり。。らしい
筋トレ後に身体を温めると筋肥大に効果があるらしいです。
下記はラットを用いた熱によるストレスと筋肥大について研究した論文の一文です。
すなわち,温熱ストレスにより骨格筋の肥大が引き起こされたことになる。温熱ストレスのみで骨格筋が肥大するという結果は,これまでニワトリを用いた研究ではあるものの,哺乳類を対象にした研究は本研究が初めてである。
出典元:温熱ストレスにおるラット骨格筋の肥大
身体が温められるというストレスに対して体内でヒートショックプロテイン(以下HSP)というタンパク質が合成されるのですが、このHSPが筋肥大に影響を与えていて熱ストレスを与えるだけで筋肥大を起こすという研究結果が得られたということです。
また、下記の一文も記されています。
一方,骨格筋に対しては,機械的ストレスによって起こる筋肥大を温熱ストレスが促進させるとの報告があるものの,温熱ストレスの骨格筋に対する影響については不明な点が多い。
出典元:温熱ストレスにおるラット骨格筋の肥大
機械的ストレス、要は筋トレです。筋トレによって起こる筋肥大を温熱ストレスが促進する可能性があるということですね。
不明な点が多いとされていますが可能性を否定しているわけではないので、少しでも効果があるのであればやっておきたい内容です。
別の文献では運動前にHSPが生成されていると筋肥大を抑制するという報告もあるようですので、温めるのは筋トレ後にした方がよいと思います。

まとめ
- 筋トレ後のアイシングは筋肥大を抑制する可能性がある
 - 筋トレ後の温熱ストレスは筋肥大を促進する可能性がある
 
以上より 「筋トレ後は身体を温めたほうがよい」が冒頭の疑問に対する答えになります。
いかがだったでしょうか。今後全く逆の研究結果が出てくる可能性も否定できませんが、現状一つの答えとして参考にしていただけたらと思います。